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新月
第2章 新しい主人
長い廊下を右にいったり、左にいったり———。
御屋敷の奥の奥の方、
薄暗い、そしてとても静かな場所にきた。
チヨはこんなところに同い年の男の子がいるとは思えず、
「あの、…旦那様…?」
藤木はある部屋の前でぴたりと止まり、振り返らず、無言であった。
チヨはどうしていいかわからず、周りをキョロキョロと見渡した。
すると———。
「お父様……?」
チヨと藤木の目の前の部屋から、か細い涼し気な声がした。
(え…?)
チヨは大きな背中を見つめることしか出来なかった。
「美月(みづき)、入るぞ。」
藤木はそう言い、部屋の襖をあけた。
襖を開けると中から藤の花の香りはフワリと溢れてきた——。
藤木は部屋に片足を入れると、
「チヨ坊、来なさい。」
やっとチヨの方を振り向いて、部屋に入るよう促した。
「は、はい!」
チヨはドキドキしながら、部屋の中の住人を目で捜した———。
すると、
部屋の隅の椅子に腰掛けている女を目で捉えた。
(うわっ……!
なんて、綺麗なの………)
美月と呼ばれた女は、
長い、艶やかな黒髪、
陶器のような白い肌で、
しかし、目は瞼で覆われたまま、こちらに顔を向けていた。
「そちらの方は?」
紅でもさしているのか、赤く艶かしい唇から、自分のことを言われているのだと気づくのに、しばらく間があった。
チヨは、ハッとして、
「チヨと、申します。」
……。
それしか、言えなかった。
御屋敷の奥の奥の方、
薄暗い、そしてとても静かな場所にきた。
チヨはこんなところに同い年の男の子がいるとは思えず、
「あの、…旦那様…?」
藤木はある部屋の前でぴたりと止まり、振り返らず、無言であった。
チヨはどうしていいかわからず、周りをキョロキョロと見渡した。
すると———。
「お父様……?」
チヨと藤木の目の前の部屋から、か細い涼し気な声がした。
(え…?)
チヨは大きな背中を見つめることしか出来なかった。
「美月(みづき)、入るぞ。」
藤木はそう言い、部屋の襖をあけた。
襖を開けると中から藤の花の香りはフワリと溢れてきた——。
藤木は部屋に片足を入れると、
「チヨ坊、来なさい。」
やっとチヨの方を振り向いて、部屋に入るよう促した。
「は、はい!」
チヨはドキドキしながら、部屋の中の住人を目で捜した———。
すると、
部屋の隅の椅子に腰掛けている女を目で捉えた。
(うわっ……!
なんて、綺麗なの………)
美月と呼ばれた女は、
長い、艶やかな黒髪、
陶器のような白い肌で、
しかし、目は瞼で覆われたまま、こちらに顔を向けていた。
「そちらの方は?」
紅でもさしているのか、赤く艶かしい唇から、自分のことを言われているのだと気づくのに、しばらく間があった。
チヨは、ハッとして、
「チヨと、申します。」
……。
それしか、言えなかった。