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ネムリヒメ.
第8章 雨.
「…ったく、ふざけんな!! そこらへんフラフラさせてんじゃねーよ!!」
「ちょっ、みっくん待って。彼女は……っ!!」
葵くんがそう言いかけると、背後での開きっぱなしの玄関の扉から低い靴音がして、きつく掴まれていたアタシの手がそっと振りほどかれた
…温かい手の感触に振り返る
すると、雨に濡れた渚くんが赤くなったアタシの手首を見て、眉を寄せ怪訝な表情をしていた
「っ…渚く…」
雨に濡れた彼の手にはたくさんの荷物と…
ぁ、…傘………
渚くんに届けるはずだった傘を彼が手にしているのをみて、胸が締め付けられて鼻のあたりがツーンと酸っぱくなる
「渚……さん…!?」
突然手を振りほどかれて驚き様子を隠せないでいる彼
「…雅………なにしてんの…」
渚くんは冷たく蔑む眼で彼を見ると低く威圧的な声を放つ
すると、よっぽど驚いているからだろうか
彼の瞳からみるみる殺気が消え、渚くんの顔を見返しては返す言葉もなくただ呆然としている
「…渚くん、タオル」
そこに聖くんがタオルを持ってきてくれて、渚くんはそれを受け取ると冷たくなったアタシのカラダを包んでくれた
その瞬間、ホッとして力が抜けたアタシは彼の腕のなかに崩れ落ちる