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ネムリヒメ.
第8章 雨.
『泣かしたらただじゃおかねーぞ…』
楓が出掛けて行く前に言い残していった、あの威圧的な声が雅の脳裏を掠める
楓さんは妹のコトになると容赦ない…
渚さんがロリコン呼ばわりするくらいの溺愛ぶりで…
出掛ける前には凄まれ、それは最も承知していたはずなのに…
激しく廻る想いとは裏腹に、雅はしばらくその場から動くことができないでいた
「…まぁ、彼女が"楓くんの妹"だろうがなかろうが、オレらにはそんなコトどうでもいいんだけどね……」
「………」
薄ら笑いを浮かべチラリと顔を向ける聖に葵が鋭い視線だけを返す
顔面蒼白状態の雅…
そんな雅に聖が顔を寄せ白い指で顎の下を撫でた
「渚くんもかなりご立腹だし………ねえ、雅…」
「っ…!!」
「オンナ嫌いのお前には関係ないと思うけどさ……お前はそのまま大人しく…オレたちの邪魔、しないでね…」
栗色の瞳をギラギラと光らせた聖の氷のような笑顔
雅は全身に鳥肌がたつのを覚えた