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ネムリヒメ.
第9章 イチゴ味の夜と….
…あれからアタシは葵くんとダイニングにいた
到底、部屋に戻る気にもなれず、気がつけばもうすぐ日付が替わろうとしている時間だった
「ちーちゃん、夕飯食べてないから何かつまむ?」
「ん…」
小さく頷くアタシに時間も時間という葵くんの配慮もあって、彼はいろいろなフルーツを剥いてもってきてくれた
温かいハーブティーを入れてもらって彼と一緒につまむ
コンタクトを外した黒い瞳の葵くんは、相変わらずオシャレな黒渕のメガネをかけていて
アタシの目の前で頬杖をつきながら長い指でイチゴを手に取り弄んでいる
「ちーちゃん イチゴ好き?」
彼にそう聞かれて「うん」と頷くと
「じゃオレ、イチゴ好きな子…好き」
と言って、アタシを見つめながらオンナ殺しの笑顔を向けてくる葵くん
ただでさえカッコいい顔でそういう顔を作るのは犯罪だと思う
間違いなく確信犯
女の子なら普通、イチコロなんだろうな…
でも残念…
さっきパニックを起こした反動で頭がよく働かないのか、心臓が過労で倒れてるのか、なにかが胸のなかでつかえて感情が揺れるのを邪魔をしてる気がする
葵くんの必殺技を前にして冷静にこんなコトを考えている時点で、頭は回ってるのは確かなんだけど、今のアタシのハートは驚くほどドライで鈍いようだ