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ネムリヒメ.
第9章 イチゴ味の夜と….
「千隼…顔あげて」
彼の手がそっと伸びてきて髪をなでる
優しい声でアタシの名前を呼びながら長い指が耳に触れた
「ん…くすぐったい」
赤くなった耳を弄ぶその感覚に観念して顔をあげるアタシ
渚くんを見ると彼と視線が絡んだ
「っ…」
なんなの、なんなの、なんなの…
その目は、そのフェロモンは、この空気は
……どうしちゃったの!?
なにやってるの、アタシ…
夕べは葵くんにドキドキしてたくせに、今はなんの躊躇もなく渚くんのベッドにいて、目の前の彼の甘い空気に飲み込まれそうになってて…
………目が…離せない
「千隼…」
彼が再び名前を呼ぶ
そして長い指が滑るように頬に触れ…
唇に触れた
「どうしたら…眠れる…?」
「っ…」
そんなの…
そんなの…こっちが聞きたい
誰か知っているなら
教えて欲しい…
どうすれば朝がくるかを…
目の前でアタシを見つめる彼の瞳に、よくわからない感情で胸がいっぱいになる
誰か教えて…
胸が苦しい…
この感情は…なに
わからない…
…なのに、
「抱いて…」
ごちゃごちゃする頭のなかとは裏腹に
すでに… 唇がそう動いていた
「っ…!!」
渚くんの黒く濡れたような瞳が揺れた