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ネムリヒメ.
第15章  イチゴタルト.



…………



…バタン



「…遅い……」


その日の深夜、帰宅した渚がリビングに足を踏み入れるなり、飛んでくる低い声

その声の主は、ネクタイを緩めソファーの上にジャケットを脱ぎ捨てる渚の前でギラリとナイフをかざしている


「……こわっ、なにやってんだお前」

「なにって…」


そう言うと迷いなくそのナイフを垂直に突き立てた…






…先は




大きなホールのイチゴタルトで、


「見ればわかるでしょ、やけ食い」

「は!? 女子かお前は…」


突っ込む渚に構うことなく、フォークを口へ運ぶのは聖だ


「葵は!? 車あったから帰ってきてんだろ…ったく、携帯切りやがって」

「…籠城してる」

「は!? 日本語話せ…」


顔をしかめながら聖が飲んでいるシャンパンを取り上げ、グラスに注ぐと一気に呷る渚


「…おい、聖」

「んー!?」


何かに気づいた渚がシャンパンクーラーに戻す前に手元の黒い瓶を眺めれば…

【HENRI GIRAUD
Fut de Chene Grand Cru 2000】


「アンリ・ジロー/フュ・ド・シェーヌ…ってこれ葵のだろ、最後の一本」

「あ、そうだった!?」

「葵に喧嘩売ってどうすんだよ」

「あはっ、喧嘩だなんて……売ってるけど♪」

「…アホ」

「だってー…はい、渚くん着席」

「………!!」


聖は空いた渚のグラスにシャンパンを注ぎ足した



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