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ネムリヒメ.
第19章  記憶の中の摩天楼.





が、


そんなアタシの返事にも関わらず、エレベーターの壁に寄りかかり微笑む彼は腰に回した手で容易にアタシを引き寄せた


「ちょっ……」


しかし、ぽふっと彼の胸に飛び込めば不思議とカラダの力が抜けるわけで


「ねぇ…渚くん」

「ん…!?」

「アタシ…ちゃんと思い出せるかな…」


そんな弱音まで吐く始末


だって、そのために今日、みんな集まってくれたんだよね

こうしてわざわざ案内してくれるのも…

嬉しい反面、どこかプレッシャーに感じてしまうのも正直なところで思い詰めるほどどんどん自信がなくなっていく

すると


「なぁ…とりあえず肩の力抜けよ」

「へ…」


頭に添えられる優しい手


「一回、頭真っ白にしろ…プレッシャー感じなくていいから

そんなんじゃ、思い出せるもの思い出せねぇよ」


あ…

欲しかった言葉をくれた彼にちょっと甘えたくなるアタシ


「で…も……やり方わかんない」

「は…」


チラッと上目で見上げて素直にそう伝えると、渚くんはエレベーターのどんどん小さくなる行き先の階数を確認してから一瞬笑った


「真っ白にしてやろうか…」

「………!!」


え…どうやって!?

確認する間もなく背中に感じる冷たくて固い感触と、それに反して唇に感じる温かくて柔らかい感触


「ふ…う……」


唇を唇でこじ開け、割って入ってくる熱い舌の感触に思わず身を引くけれど

背中にあたる冷たかった壁の感触が急激に上がる体温に馴染むだけだった



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