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ネムリヒメ.
第19章 記憶の中の摩天楼.
それから、いつ誰が乗ってくるかわからない小さな箱のなかでの秘め事のスリルにも似た切迫感に
もういいよ
もう充分だからっ
力なく渚くんの肩を叩くけれど…
次第にそんな力さえもなくなり、陶酔のような目眩がアタシを襲う
「は…ん……」
言葉通りに彼のそれはアタシの頭のなかを容易く真っ白にする
吐息を絡め、蜜を絡ませるその行為はエレベーターがフロアに到着するまで続けられた
チン…
「ほら、しっかり歩け」
「っ──────!!!」
た、立てない
目的のフロアに到着するとエレベーターから無惨にも渚くんに引きずり下ろされるアタシ
しかし、目に飛び込んできた見覚えのある光景に目を見開いた
え、なんで…
それは渚くんが初めに連れてきてくれたのはさっき雅くんときたショッピングモールのエリアだったから
「ここきたよ…」
「知ってる、とりあえず立て」
「む…無理です」
「情けねぇな」
「ちょっと!!」
だったら腰、砕くなぁ!!
「…頭、真っ白になっただろ」
っ…!!
そうですけどね
悲しいことに面白そうに見下ろす彼になにも言い返せなかった
「まぁいいからとりあえず普通にデートしようぜ」
は…
「お前、雅となんて緊張してなんも見てないんだろ」
「で…も」
確かにそうだけど…
「着飾るのは外見だけでいいから、オレといる時ぐらいいつも通りにしろよ……我が儘に」
「っ…」
ひとこと多いんですけど
でも、なんてこと言ってくれちゃうんでしょうか
この色男は…
「ありがと…」
「ん…」
今日久しぶりに自然と頬がほころぶのを感じる