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ネムリヒメ.
第19章  記憶の中の摩天楼.





「品物は明日の朝までオレのオフィスに届けといて」

「…かしこまりました」


行く先々のショップでそう告げ、今日は荷物を持たず手ぶらで歩く彼の腕に手を添えて並んで歩く

さっきと違って気持ちが軽いせいなのか、足取りもとても軽かった


「はぁ…手ぶらは楽でいいわ、千隼チャン」

「は…」


それってあの日のコトを言ってるのかね…

初めて一緒に買い物に出掛けて、アタシが渚くんの車を荷物でいっぱいにした日


「…そうですね」


嫌味ですか、軽い嫌味ですよね

面白そうに見下ろす渚くんを睨んでみる

しかーし、


「おわっ!!」

「っぶね…」


渚くんに気をとられ、思いきりよそ見をしていたせいで躓くアタシ


…を、

抱き止めてくれるスマートだけど逞しい彼の腕


「クスッ……な!?」

「───!!」


…な!?

ってなに


なにその日本語!!

フルオーダーのスーツを着こなして気品を漂わせ、優雅な笑みを見せるそのオトコの放ったたった一文字に、

さっきまで飲んでいたアルコールの酔いが一気にまわる


「まだ酔ってんの」

「っ…今、酔った」


─渚くんに…


「…は?」


っ…思わず声に出すところだった

おかげで心拍数、体温共に急上昇を始める


「っ…なんでもないっ!!」

「フッ…そ!?」


っ───!!

そうだ、ここは完璧に渚くんのテリトリーだった

この、港の王宮とも言えようこの建物のなかで絶対的な存在である彼は、もはやアタシの鼓動から体温迄をも支配しようとしてる…





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