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ネムリヒメ.
第22章  あの夜の…….




「っ…ちーちゃん…」


ハッとした聖くんの少し掠れた声…


アタシの涙に彼は唇を噛み締めた


「ねぇ聖くん…もう一度言って」


それが本当ならアタシ…


"…お前のカラダはオレを知ってる"


「っ…………」


"誰よりも先に自分のモノにしたくせに…"


それってやっぱり…


「ねぇっ、言って…」


アタシ、雅くんと…


「ちーちゃん…」

「ッ…言ってよ!!」


ソファーから腰をあげた弾みで、瞼に溜まった滴がポタッと聖くんのスーツの袖に染みをつくる

アタシを見上げた聖くんの泣きそうな顔…

彼は堪えきれなくなったように視線をアタシから外した


「っ…」


なんで…

聖くん、どうして黙っちゃうの

渚くんも…

葵くんも…


もう頭のなかはめちゃくちゃで…


「っ………ふ…ぇ…」


戸惑いと不安にぐちゃぐちゃになった胸から嗚咽が込み上げてくる


「っ……ちーちゃん」

「なん…で…」


哀しそうに顔を歪ませたままの聖くんの手がそっと延びてくる


だけど…


「ちぃ…」


先に零れた滴を掬ったのは、横から伸びた大きな手だった


「っ…!!」

「…泣くなよ」


振り返る間もなく手を引かれて温かい腕に包まれる

顔は見えないけれど、今日知ったばかりの

優しくて、甘くて、温かい

声と、匂いと、体温…


そして、開いたシャツの胸元から覗く真新しい引っ掻き傷


それは充分すぎる程、アタシをそっと抱き締めた人物の名前を物語る




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