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ネムリヒメ.
第25章 Black Emperor.
…いつの頃からだっただろうか
一度抱いたオンナは二度と抱かない
匙を投げたように渚くんが誰にも執着しなくなった
器用な葵くんは生粋のプレーボーイになって、雅は無差別の極度なオンナ嫌いになっていった
幸い、そんな雅のお陰で邸が無法地帯になることはなかったのだけれど…
歪んでしまったオレたちが負っていた傷はみんな一緒だった
"目には目を…
害を受けたらそれに相応する報復を…"
そんな言葉があるように、
気がつけば、自分もいつのか間にか異性に対する感性が歪んでいて
ヒトをヒトとして扱わなくなっていた…
異性なんて暇潰しの玩具、利用価値のある道具、いつからかそんな風にしか見なくなっていた
ずっと欲しかったモノを諦めて、
そんなことでしか自分を守る術をオレたちは知らなかったから…
だから…蓋をした。
傷つかなくていいように、胸が痛くならないように、
欲しかったモノを諦めて蓋をしたんだ
だから恋愛なんて…
そんな甘ったるいモノの仕方なんてとっくに忘れていたし
誰かを愛しいとか
誰かを守りたいとか…
そんな…
そんな気持ちが湧くことはもうないと思っていた
だけど…
雅の言葉に傷ついた彼女が、自分と同じ古傷を抱えていると気が付いたとき…
自然とその涙を拭ってあげたいと思った
鏡越しではない自分を見てくれる彼女の瞳に気が付いたとき…
その睫毛を濡らす冷たい滴を払ってあげたいと思った