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ネムリヒメ.
第25章 Black Emperor.
…急いで!!
確信をついた自分の言葉半ばで、彼が踵を返す音が聞こえ、そのまま返事もなく通話が途切れる
ただ無言で通話時間を表示するディスプレイに目を落とすと、どうしようもなく涙が込み上げてきそうになった
だけど…
泣くのはまだだ
オレにはまだやることが残ってるから…
「ねぇ…」
─まず、初めに…
聖は今すぐにここを飛び出して行きたい気持ちを堪え、惨劇が現在も進行し続けているソファーに足を向ける
もちろんそこにいるのはオンナたちに犯されかけている葵だ
こんな姿の彼は今まで誰も見たことがないだろう
「…いろいろ返して」
感情を圧し殺すように低められる声
香水の匂いと熱気でむせそうな空気のなか、冷たい瞳で頬笑むと自分の周りが急激に冷え込むのを感じる
「郁くんから預かってるの、伝言だけじゃないでしょ」
─返してもらうよ、葵くんも…
「…ちょ…やめ、んんっ!!」
今にも窒息しそうな葵を顎で指す聖
すると、
「フフッ…いいわよ」
葵のはだけた胸元に唇を寄せながら、腸腰筋のラインを撫で腰骨と布の隙間から下へと手を滑り込ませるオンナが顔をあげた
しかし、
「でも、葵はダーメっ」
「──ッ!!」
情けなくも顔を歪めるプレーボーイ
短く吐き出した吐息は、次の瞬間には別の唇に遮られる
「…アタシたち、葵に餓えてるの。葵ってば最近ぜんぜん遊んでくれないんだもん」