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ネムリヒメ.
第25章 Black Emperor.
まずはコレが消えればこのコインが彼のモノだと確定される
郁がわざわざ紛失と人目に触れるのを避けてまで聖に渡してきたデータ
となれば、その中身の方はある程度は察しがついた
しかし、今はそんなの後回しだ
これがきちんと彼のモノなのか否か、ただそれだけがわかればいい
それから間もなく、三つ揃ってこそそこに郁がいることを示してきた点滅の最後のひとつが消失するのを確認した聖は、元に戻したコインを胸元に忍ばせ、グラスのテキーラを空にして水没させたガラクタたちを手早く回収する
「…ダメにしたけど置いてく方が悪いよね」
最後に遣いものならなくなった郁の愛車のスマートキーをポケットに差し込むと、全身で大きく息を吐き出した聖は引きずるように腰をあげる
…壊れたからって恨むのは筋違い
どうせ帰れやしないんだから
これが遣いものになろうがならなかろうが、あのオトコには必要ない
魔王の宮殿からはしばらく出られないよ
でも、朝日ぐらいは拝ませてあげてもいいかな
…東京湾で♪
「さて…いかなきゃ」
─目には目を…
郁くんにはそれなりの報復が待ってるから
栗色の瞳からうっすらと光が消える
─オレたちから彼女を奪った代償は大きいよ…
感情を閉ざすように閉められた扉が重い音をたてる
その音は薄明かりの空間に尾を引くようにいつまでも響いていた