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ネムリヒメ.
第25章 Black Emperor.
─望がNEO魔王へと覚醒した。
ずぶ濡れになった彼女を見下ろす瞳はただならぬ狂気で満ち溢れている
もしここに戦闘力を計れるメガネがあれば、測定不良を起こして間違いなく爆発する
もちろん、高すぎるという意味でだ
中身が全部ぶちまけられて、逆さにされたグラスからタピオカがひとつだけ落ちてきた
絶妙な食感をしたそれは若葉ちゃんの頭のてっぺんで一度跳ね、床にこぼれて帰らぬ存在となる
思わぬ置いてきぼりに望から舌打ちが聞こえた
一方、突然姿を現した魔王に思わぬ洗礼を浴びせられた若葉ちゃんは、声をあげることはおろか、ただ呆然と春色のドレスが茶色い雨に浸食されていくのを黙って見つめているだけだった
その姿は水も滴るイイオンナどころか、春の満開から突如根腐れでも起したのか枯れて朽ち逝くサクラのようだった
散り際の儚い美しさなどは微塵もなく、一瞬にして滅ぼされてしまった憐れな花
彼女を揶揄するにも、これ以上の侮辱は今日のところはもうないだろう
すると、
「ねぇ…なに鳩が豆鉄砲喰らったような顔してるの」
天使の顔をした魔王が下界の愚物を上から見下ろし微笑んだ
ただ勘違いしないで欲しい…
理由なくこの世に魔王は現れない
特に若葉ちゃんなんて、勇敢な海賊たちの大航海に感化された望の奇行だとしか思ってないだろうけれどそれは違う
彼女はなにも知らないだけだ
むしろ知らないのが当たり前なのだ…
その理由はオレと望以外、誰も知る由がない