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ネムリヒメ.
第25章 Black Emperor.
そして"バトンタッチ"とでも言うかのように、彼に向かって握っていた小さな鍵をテーブルの上でそっと滑らせた
「あのさ、いつも言ってるケド…」
…それから、オレからの無言のメッセージを受け取った望の怒気にまみれつつ、しかしどこか落ち着いた声が若葉ちゃんに降り注いだのは直ぐのことだ
「若葉ちゃんに限らず、どんなにくっだらない茶番だろうが、どんなにツマンナイままごとだろうが…
下心見え見えの戯れ事だって、オレは暇潰しにいっくらでも付き合ってあげるよ。
…でも、忘れないで欲しいな~。
好き勝手やらせてもらってるケド、オレも歴とした筋金入りの紫堂の人間だって…」
「…ッ……」
そこでワントーン落ちる望の声とただならぬ圧に今にも押し潰されそうになっている若葉ちゃん
それを肴にする自分も酷だと思いつつ、涼しい顔で残りのメープルシロップを一気に呷るオレを微塵も気にすることもなく望は続ける
「だから将来的に"紫堂渚"の手を煩わせるコトになる面倒事は早急に潰すのが道理。
どんなにマンガが読みたくても、どんなにミルクティが飲みたくても、企みをわかっててみすみす見逃すワケにはいかないんだよね」
「………」
「…わかってたんだよ、兄さんに呼ばれたオフィスで若葉ちゃんを見た時から。今は豆鉄砲喰らった鳩みたいな顔してるけど、あの時泣きながらいったい自分がどんな顔してたと思う。
"夜目遠目笠の内"なんて都合のいい言葉があるケド、オレの夜目には通用しなから」