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ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
…………
「あ…外れた」
雅のそんな声と金属の鍵が外れる固い音が響いたのは、スイートルームの一角だった
3人のオトコたちが見守るなか、千隼の手首から黒い鉄の呪縛が外される
意外にもそれは、鍵の所在の疑いを郁から若葉へと向けてからすぐのことだった
─手鎖の鍵は間違えなく若葉が持ってる…
そんな確信に辿り着いた否や、望に電話をかけ始めた渚
…若葉なら今、望といる
ロビーで父親の背中を見送った時点でカジノから蹴りだしてやっても良かったのだが、都知事の娘をそこら辺に野放した暁は目に見えている
今夜は誰もが千隼で手一杯だ
だから来るなとこれでもかと釘を指しておいたのに…
ただでさえ面倒なオンナの、ましてやこんな時の面倒事はなんとしても避けたかった
故に、渚は一番手っ取り早いオフィスの自室に連れ込んだ
身の安全を確保してやる代わりに散々泣かせたのは言うまでもないが、呼び出した望に若葉の身柄を押し付けた
望なら若葉の万が一にも対処できる
本人が巻き起こすものも含め、あらゆるトラブルを危惧したうえでの渚の判断だった
しかし、困ったことにその望との連絡がとれなかった
何度かけ直せど一向に繋がらない携帯電話
呼び出しのコールも始めのうちは鳴るものの、何度目かを境に電波が届かないとか電源が入っていないとの旨を告げる機械音声しか返ってこなくなってしまう