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ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
その瞳に一瞬、のみ込まれてしまいそうになった
のみ込まれたら最後、自制が効かなくなる…
雅を捉えるのは色を帯びたそんな瞳だった
そこで過る心地の悪い既視感に中半強引に視線を引き剥がす
「───ッ…」
無理矢理蓋をして閉じ込めたはずの感情が、どうしようもなく掻き乱される感覚に心中で悪態をつく
─なにやってんだ、オレ…
傷ついたのは千隼なのに…
自分が胸を痛める権利なんてどこにもないのに…
なのに、
まるで刃物で抉られたかのように酷く胸が痛んで…
抱き締めてやりたいのに、そんな自分が彼女に触れていいものだろうかと思ってしまう自分がただやるせなくて
彼女の頬に触れる微かに震える指先に視線を落とす
すると…
「雅…くん…」
「……!!」
掠れた小さな声が雅の耳を掠めた
そして自分の手に弱々しく触れた細い指先…
思わず握り返した彼女の手は驚くほどとても冷たい
ハッとして視線を戻せば、絡んだ視線の先で千隼が何かを口走る
それは声にならないくらいの吐息のような声なのに、まるで悲鳴のように鼓膜に届いて
感情に押し潰されそうになるのを必死に堪えながら、雅は彼女の声に耳を傾ける
「千隼…」
「…熱…ッ……い」
「……」
「……苦し、ッ…」
「ッ…」
彼女が口を開く度、弱々しくも絡められた指先に力が込められて、絞り出したような甘ったるい声と熱い吐息が唇を割る