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ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
…それはまさに悲鳴だった
「お前…まだ…ッ…」
郁に飲まされたモノがまだ抜けていないのは目に余るくらい一目瞭然で…
「…雅…く…」
熱に浮かされたまま、すがるように名を呼ぶ千隼の声に雅が眉根を寄せた
「──ッ…」
─こんなにもめちゃくちゃに…
「雅くんは…」
「ッ…千隼」
─こんなにも声が嗄れるほど啼かさせれて…
「もう…なにも」
─それなのに…
「っ…言うな!!」
─お前は…
「…抱いて…くれないの」
「……!!」
それ以上を遮る雅の悲痛な声に千隼の声が重なった
…刹那、
「ッ…バ…っカやろ!!」
雅は乱れた髪ごと掻き抱くように千隼を抱き起こし、その腕で彼女をキツく抱き締めた
…彼女は泣いていた
虚ろな瞳から次々と涙が溢れ落ちて、雅のシャツに見えない染みをつくる
「…助け…て」
「…ちぃ」
「雅くん、助けて…」
冷たいシャツに染み込んだ涙は彼女がここにいることを示すかのようにどこか温かく
雅はそれを確かめるように、千隼を抱く腕に力を込めた
折れそうなくらいに抱き締めて、乱れた髪をそっと撫でる
彼女の細い線がいつもより、より細く感じられた
本当にいつ消えてしまってもおかしくないような、いつ壊れてしまってもおかしくないような腕のなかの存在を、壊れて消えてしまわないように雅は抱きすくめる