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ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
そんな雅に再び既視感が過った
その感覚は脳裏に焼き付いた光景を映し出し、雅をあの夜へと誘(イザナ)おうとする
それは…
雅が千隼を初めて抱いた夜へと
こんな風に途方もない熱に犯された彼女を
その熱ごと奪うように拐って、誰よりも先に自分のモノにした
彼女を初めてこの腕のなかで鳴かせたあの夜へと…
「─ッ…!!」
しかし、
雅は今にも連れ戻されそうなその感覚を中半強引に拒絶した
グッと堪えるように、千隼から己の身を引き剥がす
そして、彼女の顔を見ないまま隠すように自分の肩口にその額を押し付けると、ギュッと腕のなかの小さなカラダを抱き締めた
「…や…めな…っ、で」
「っ……」
どんなにくぐもった小さな喘ぎが耳を掠めても
「も…忘れ、ない…から…」
「………!!」
どんなに…
「雅く…のこと、…」
嗚咽混じりの彼女の悲鳴が唇を割っても
「忘れな…ッ…から」
こんな…
「…抱けるかよ」
身も心もボロボロな彼女を
─オレは…
「…ッ、抱けるわけねぇだろ…!!」
まるで胸を裂く悲鳴のような、自分の掠れた声に息が詰まった
ぐしゃぐしゃになってしまった今にも壊れそうな彼女を、ぐしゃぐしゃな感情のまま壊れそうなくらい抱き締める
「……バカ言ってんな」
震えながら嗚咽を溢す腕のなかの熱くて冷たいカラダにそっと顔を埋める雅
「バカ言ってんなよ…」
今にも泣きそうなくぐもった声は深い静寂に溶けて、やがて霧のように消えていく