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ネムリヒメ.
第5章  シャンプーとアイスクリーム.



それから荷物を片付ける作業の手はほとんど進まなかった




渚くんのせいだ…


そう思えば思うほど彼の匂いや、唇の感触が思い出されてカラダが熱くなる


…絶対、おかしい

アタシ…変だ………


"楓、楓って言えなくなるのも時間の問題だな…"


ふと、彼に言われた言葉が頭を過る


っ…


そんなことない!!

そんなこと………


自分に言い聞かせながら、首をぶんぶんと横に振る


なのに…

なのに…なのに…なのに………



さっきからなんだか自分だけおあずけをくらったような気分になっていて、彼の色気たっぷりなあの余裕綽々の笑みが脳裏から離れない



あぁー、もう…



なんで、渚くんのコトばっかり考えてるの…


…こんなの、なんか戸惑う


「はぁー…………」


大きなため息がこぼれる


下を向けば、さっきから作業の手は止まったままだ


「もう、終わりっ!! お風呂行こうっ」


よしっ!!と、気持ちを切り替えたくて勢い良く立ち上がる

…が、向かう先がまた彼の部屋というコトに気づき、再び頭のなかが彼に浸食される


「あぁ…、シャンプー……早めに買わなきゃな…」


大きく息を吐きながら自分の部屋を出て背中で扉を閉めるアタシ



─でもこのあと、ただでさえぐちゃぐちゃのアタシの頭のなかは、もっとめちゃくちゃに掻き乱されるコトになるのだ

が、

預言者じゃないもの…

そんなコトは知らないまま、アタシはシャンプーを求めて渚くんの部屋に足を向けたのだった


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