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ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
「…………」
サラダから弾かれたトマトが山積みにされたお皿を横目にして、そんな言い合いを繰り広げる聖くんと雅くん
普段あまり見ないカップリングだけれど、歳が近いせいか案外マッチしているようにも思えるのは気のせいだろうか
雅くんがああ言えば聖くんがこう言う…
まるで水と油みたいなこのふたり
けして混ざりあって調和することはないけれど、これはこれでいいフィーリングだと思う
ただ聖くんが雅くんをおちょくってるだけかもしれないけれど、どんなに会話の内容が下らない方向にヒートアップしようとも、いつもみたく雅くんがぶちギレて席を立つことはない
互いに何だかんだ言いながらアタシの側を離れようとしないふたり
どちらも何も言わないけれど、それを含めた彼らの距離の取り方が今のアタシには丁度良くて心地いい
無論こんな状態のアタシを彼らが放って置くわけはないのだろうけれど、逆にベッタリだからといって息苦しいわけでもない
彼らは自然と、今のアタシがありのままのアタシでいられる場所と空間を作ってくれていた
「あの…トマト、美味しいよ」
「美味しくねぇよ」
「お子様お子さ……っ!?」
そこへ突如鳴り響くヒールの音
揃えて顔をあげれば、貸切状態のプールサイドをこちらに向かって歩いてくる人影がある
誰だろう…
その姿は渚くんでもない、葵くんでもなければベッドを分けあった謎の天使でもない