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ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
わかってる
それはわかってるつもりで
ちゃんと覚悟はできてるから
でも…
「…ッ─」
あれから初めて口に出されたその名前に、ドクリと嫌な音が胸を貫く
部屋の扉がとても重たく目に映った
その重さはまるで自分の胸のうちに比例しているかのようだった
「お前、やっぱり…」
扉を見つめるアタシに不安そうに顔を歪める雅くん
冷たく震えだした指先を、聖くんが包み込むように握り直してくれる
"部屋に戻りたい…"
そう言いだしたのは自分だった
瑠美サンがいるプールサイドで、まだろくに食事も口にしないままぼんやりと呟いたアタシに、3人が目を丸くしたのをよく覚えている
だって、会いたかったから…
『まーったく、毎晩取っ替え引っ替えフラフラしてる葵が急に珍しく深刻な声で連絡してきたと思ったら…
はい、これで"葵の一生のお願い"はちゃんと叶えたからね』
『え…』
手首の傷に丁寧にも処置を施して包帯を巻いてくれた瑠美サンが、含みのある余韻を残して綺麗な笑みを見せた
"一生のお願い"って…
『やだなぁ、葵くんってば。そこまでオレたちのこと愛してくれてるな…』
『言っとくけど貴方たちふたりはオマケだからね』
『オマ…っ、はぁ!?』
彼女の言葉と、その整った目鼻立ちに重なる葵くんの面影に、アタシの胸は急激に締めつけられる
それに手元では何も言わず出されたホットミルクが甘い湯気をたてていて…