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ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
「もーいいから、いつものやってよ」
「ったく、仕方ねぇな」
そして始まるのはいつぞやの雅くんのインターフォンの連打、ピンポンダッシュならぬピンポンラッシュで…
「ほらほら誰か出てくるまで連打、連打♪連打の達人頑張って♪」
「郁が出てきたらどうすんだよ。つーか、なんかのゲームみたく言うんじゃねぇよ。しかも気が散るから連打連打って連呼すんな」
「郁くんはないない。きっと今頃コンクリ詰めにでもされてるから。それよりも目指せハイスコア。さぁて、誰が出るかな♪誰が出るかな~~~♪」
繋がれたアタシの手を楽しそうにブンブンと振りながらフフンと鼻を鳴らす聖くんに、物凄く真剣に尋常じゃない速さでの連打技を披露する雅くん
すると突然
「…ちーちゃん楽し?」
「え…」
えーと、聖くん?
この状況でアタシにいったい何を楽しめと…
しかし、読心術を保持する能力者はそんなアタシの胸の内を読んだうえであっけらかんと笑って見せる
「…ちーちゃんはひとりじゃないよ。オレも雅もこの手は絶対に離さないから」…と
…聖くん
再びキュッと絡まる指先に力が込められ、またひとつ柔らかな羽がアタシのなかに降り積もる
と…そこに、微かな人の気配とともに
「なにやってんだお前ら…」
かけられるそんな声…
「…!!」
そして振り返る間もなくアタシのカラダはまるごとその腕に掴まえられ…
「ッ…────千隼…」
抱きすくめられた耳もとから聞こえたのは、消えそうなほど小さなため息のような低い声だった