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ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
そして…
「…なめんのも大概にしろよ。二度とこいつの前にあんなもん晒してくれるな」
その覇気に怯んでびくともしない郁さんの胸ぐらを繰り寄せて…
「……じゃねぇと本気でその口、二度と回らなくするからな」
そんな言葉ひとつだけで人ひとり平気で気絶させるとか…
──そしてその効果は絶大…
アタシもまたそれに然り…で………
………
……
…
「ちーちゃん…」
「………」
「…ちーちゃん」
ん………
「ッ…!!?」
「…平気?大丈夫?」
あ………
目の前には不安げに顔を覗き込む金髪美男子…
そしてここは…
…あぁ、やっぱりそうだ
再びベッドのうえだった
降臨した真っ黒な魔王・渚くんのひとことに目の前で郁さんが手も足も口も出せぬままに気絶して…
"…話になんねぇ。聖、あとは適当に郁(ソイツ)のこと片づけといて…"
そう吐き捨てた渚くんが振り返るのと、全身から力が抜けたアタシの意識が途切れるのと、どっちが早かったのかはわからない
ただ情けないことに、そこでアタシの記憶も途絶えてて…
「…ぁ、…アタシ…ゴメ」
「ッ、言わないで…」
あ…
ほぼ無意識だった
だけど、出かかったその言葉は苦しそうな葵くんの声に遮られる
そしてベッドの下に膝立ちになっていた彼が、握っていたアタシの手の上に俯き影を落として…
「いいから…なにも言わないで…──」
そう小さな小さな声で、小さな小さな息を吐いた