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ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
「っ…、ちーちゃんッ…──!!」
……次の瞬間、アタシは葵くんの腕のなかにいた
きつくきつく抱きしめられて、何度も何度も名前を呼ばれる
力強いその腕はなによりも優しくて、温かくて心の底からホッとする
久しぶりに間近で感じることのできた彼の匂いに、確かに自分がここにいることを強く実感する
「…ちーちゃん、ッ…、オレ…」
「………うん」
そっと顔をあげれば、痛みを抱える彼の瞳にぶつかった
葵くんが言いたいことなんてその瞳を見ればそれがすべてだ
でもね、葵くん…
「…葵くんの一生のお願い…」
「ッ…!!」
「…ちゃんと叶えてもらったよ」
"世界一大事なコ…ですって"
瑠美さんの口を通して伝えられた彼の想いが再び胸のなかをいっぱいにする
"…コンパ前のアタシを呼び出すなんて初めはどうしてくれようかと思ったけど、まさか葵の口からそんなコトが聞ける日がくるなんてね…"
だからね…
それだけで充分だよ?
"よっぽどのことがない限り一生ないと思ってたから…"
そんな葵くんに会いたくてアタシ、戻ってきたんだよ?
だから…
──なにもできなかったなんて言わないで?
その瞳に向かってそう微笑むと眼鏡の奥で彼の漆黒が大きく揺らいだ
「っ……」
すると再びアタシを抱きしめた腕に力を込めてた葵くんが、アタシの手に巻かれた包帯のうえに静かに唇を落とす