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忘れられる、キスを
第52章 DVD
もっと甘えて、と言った俺に、絵津子さんは遠慮がちにキスを強請ってきた。

キス、好きだもんね。

唇が触れるだけの、短い口付けを繰り返す。
二度、三度して、離れると、絵津子さんが恥ずかしそうに微笑んだ。

「年下だから、子どもっぽいとか、頼りないとか思ったことないよ」
「…ほんとに?」
「ほんとに」

頼りにしてる、と笑って、小さな子どもにするように俺の頭を撫でた。
こんな些細なことでも、幸せがこみ上げてくる
全く、本当に、俺はガキだな。

「ね、ガキっぽいついでにさ。手、出して?」
「手?」

俺とは違う、華奢な右手を取る。
その白い指に、枕元に隠していた小さなリングを嵌めた。

「……頼まれてもないのにユビワとか、独占欲の塊みたいで、ガキっぽいなって思ってたんだけど」

絵津子さんはじっと自分の手を見つめている。

「首や鎖骨にマーキングするよりは、マシ、でしょ?」

もう既に散々マーキングした後で、こんなこと言っても何の説得力もないんだけれど。

「ありがとう。すごく…すごく嬉しい」

ふわりと笑う顔が何とも言えず可愛らしい。

「………俺が、もう少し大人になったら、もっと良いのあげるから」
「充分だよ」

もう一度、ありがとうと言って、愛おしそうに自分の指に嵌るリングを撫でた。

「朝ごはん、何食べたい?」
「…とりあえず、絵津子さんかな?」

きょとんとした顔の絵津子さんをそのままベットに押し倒す。

やっぱり、まだまだ、大人にはなれそうにない。


fin.





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