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忘れられる、キスを
第53章 ふたりぐらし
「……よ、よかっ、た」

あ、私…何言ってるんだろ…

顔が熱い。
でも、ちゃんと、伝えたい。

「き、気持ち、よかっ……た、の」
「ほんと?」
「ん…でも……」

ぱっと嬉しそうな顔をして、でも?と不安気に眉を下げる。
その弱さが愛おしい。

「ほ、星く……りゅう、くんの、顔…見たかった…」

あの、余裕のない声を出した時、どんな顔をしてたんだろう。
欲を吐き出した時、どんな顔をしてたんだろう。
もっと、もっと、普段は見えない顔が見たい。

「俺も…絵津子さんの、気持ちよくなってる顔、見たい」

額にちゅ、とキスをされる。

ああ、もっと、して欲しい。
気持ちのいい、唇を合わせるだけの、あの、キス。

「…キス、して欲しかった?」

嬉しそうに顔を覗き込まれる。
顔に出てたのだろうか。

「キス、して?」
「ん、しよ、いっぱい」

唇が触れる。
優しく、何度も、何度も、角度を変えて、重ねられる。

「…もっと?」
「も、もっ…と…」

しょうがないなあ、と星くんは笑ってまた何度も唇が重なった。

「これじゃあ、キリない………シたいんだけど?」
「……シ、よ?」

お休みだしね、と星くんが嬉しそうに言って、そのままとさっとソファに倒された。
お休みも、二人暮らしも、まだまだ、始まったばかりだ。



                            fin

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