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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第4章 ♠ RoundⅢ(淫夢)♠ 
 これも直輝の習慣の一つ。トーストには絶対にバターしか塗らない。ジャムや蜂蜜などの甘いものは大嫌いなのだ。もちろん、コーヒーにも砂糖やミルクは一切入れない。どんな料理にでも、余分な味付けをするというのが嫌いな男である。
「いや、俺の方こそ、おとなげなく怒鳴ったりして、悪かったと思ってる」
 直輝はトーストを手にしたまま、しばらく思案顔だった。やがて、トーストを皿にのせ、立ち上がった。
「ちょっと待ってて」
 キッチンから出て、リビングの方に向かっている。何をするつもりなのかと眼を丸くして見ていたら、ほどなく裁縫箱くらいの大きさの箱を後生大事に抱えてきた。
 四LDKのマンションは、キッチン、バスルーム、トイレの他には四部屋ある。それぞれ、夫婦の寝室、直輝の書斎、紗英子の居室、リビングという風に割り当てて使っている。
 その箱は直輝の書斎ではなく、いつも居間の液晶テレビが据え付けてある台の下の棚に置かれていた。直輝個人のものなので、紗英子が無断で触れたことはない。
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