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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第4章 ♠ RoundⅢ(淫夢)♠
現在、直輝の実家は弟夫婦が暮らし、姑は彼等と一緒に暮らしている。義弟のところには子どもが次々と生まれて、いつ訪ねても三人の子どもたちの声でかしましい。姑は大変、大変と言いながらも、弟嫁が昼間は共稼ぎで仕事に出ているので、孫を保育園に送り迎えしたり、弟嫁が帰ってくるまで面倒を見たりするのが楽しくてならないようだ。
直輝が朝、新聞を読まないなんて、天地が引っ繰り返るくらい珍しいことなのである。
と、紗英子は夫が物問いたげにこちらを見ていることに気づいた。
「紗英―」
「直君―」
二人ともに声を発したのは、ほぼ時を同じくしていた。
「あ、そちらから、どうぞ」
「いや、お前から」
またも声が揃ってしまい、二人は顔を見合わせた。やがて、また同時にプッと吹き出してしまう。
「さっきはごめんな」
直輝が照れたように髪の毛をかいた。これも紗英子だけが知っている直輝の癖の一つ。夫は困ったときには、必ずと言って良いほど髪の毛を弄る。
「ううん、私も悪かった。ごめんなさい。直君に酷いことを言っちゃった」
紗英子は敢えて昔のように〝直君〟と呼んだ。バターを塗ったばかりのトーストを直輝に差し出す。
直輝が朝、新聞を読まないなんて、天地が引っ繰り返るくらい珍しいことなのである。
と、紗英子は夫が物問いたげにこちらを見ていることに気づいた。
「紗英―」
「直君―」
二人ともに声を発したのは、ほぼ時を同じくしていた。
「あ、そちらから、どうぞ」
「いや、お前から」
またも声が揃ってしまい、二人は顔を見合わせた。やがて、また同時にプッと吹き出してしまう。
「さっきはごめんな」
直輝が照れたように髪の毛をかいた。これも紗英子だけが知っている直輝の癖の一つ。夫は困ったときには、必ずと言って良いほど髪の毛を弄る。
「ううん、私も悪かった。ごめんなさい。直君に酷いことを言っちゃった」
紗英子は敢えて昔のように〝直君〟と呼んだ。バターを塗ったばかりのトーストを直輝に差し出す。