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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠

 直輝を会社に送り出した後、紗英子は洗濯機を回し、すべての部屋中に掃除機をかけた。
イブの夜のご馳走は取っておけるものはラップをかけて冷蔵庫に入れた。今日はまだ二十五日なので、ツリーももちろん、そのまま飾っている。
 ついでに風呂場とトイレも簡単に掃除し、すべてが終わる頃には洗濯が終わっていた。
 住んでいるのは七階の比較的陽当たりの良い部屋なので、洗濯物を干すには助かる。その分、他の部屋よりは家賃も高いのは致し方ない。
 紗英子はベランダに出ると、張ってあるロープに洗濯物を手際よく干してゆく。直輝と紗英子の二人分しかないので、干すといっても知れている。これで育ち盛りの子どもでもいれば、毎日、汚れ物がどっさりとあるのかもしれない。
 一時は大変かもしれないけれど、そんな暮らしを夢見た。でも、それはついに叶わず、見果てぬ夢となった。
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