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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
 幡多ふゆ香は数度目の挑戦で漸く妊娠にこぎ着けた。彼女は自分が妊娠するわけでもないのに、代理母が妊娠するまでは懐妊祈願に神社に参り、受精卵が着床したと判ってからは、安産祈願に出かけた。その模様も同じワイドショーで放映されていたのを見たことがある。
 そして、ひと月前、妊娠中の代理母が海外の病院で無事出産、幡多ふゆ香は数日前に生まれた双子の女の子を連れ、夫とともに帰国した。
―私のように子宮をすべて失っても、母親になるという道はまだ残されています。私は、今も苦しい治療を続けられているすべての不妊に悩む方々が一日も早く元気な赤ちゃんを授かることを願っています。
 幡多ふゆ香の言葉が耳奥でリフレインする。
 子宮をすべて失っても、母親になるという道はまだ残されている―。その言葉は紗英子の心を真っすぐに捉え、絡め取った。
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