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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
 夕食後、直輝は朝と同じようにコーヒーメーカーでコーヒーを淹れ、ゆっくりと飲む。夫はアルコール類は嫌いな方ではなかったが、家ではあまり飲まない。晩酌などは間違ってもしなかった。
 紗英子はアルコールは嫌いではなく、むしろ好きな方だ。たくさんは飲めないが、好きなドラマなどを借りてきて、アルコールを飲みながら、ゆっくりと鑑賞するのは大好きだ。しかし、直輝がアルコールを飲まないため、妻の自分だけが側で飲むこともできなくて我慢していた。酒豪というのではないから、長年、夫に付き合って我慢している中に、いつしかアルコールの味も忘れた。
 元々、そこまでの執着はないのだ。
 朝食のときに食べながらコーヒーを飲む習慣だけはいまだに頂けないが、夕食後にゆっくりと飲むのは別に嫌ではない。夕食後、コーヒーを飲みながら新聞を広げる夫の真剣な表情が紗英子は好きだ。
 直輝の持つカップから白い湯気がたちのぼっている。湯気を通して夫の顔を時折、ちらりと見ながら、紗英子は改めて直輝の整いすぎるほど整った顔に見惚れていた。
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