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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
 昨夜は幾度も直輝に抱かれ、彼はその度に紗英子の耳許で〝好きだ、愛している〟と囁いた。しかし、情事の最中の〝愛している〟などという科白を鵜呑みするほど愚かなことはない。男にしろ女にしろ快楽に身体を支配され、我を忘れている最中には、どのような甘い科白だとて口にするものだ。
「あなた、少し話があるの」
 別に今夜、あの話をしなければいけないわけではなかった。だが、こうと決めたのなら、早い方が良いのも確かだ。引き延ばせば引き延ばすほど、心は鈍り言いにくくなるだろうことは判っていた。
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