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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
「うん? 何だ」
 新聞に視線を向けたまま返事が返ってきた。
「大切な話よ」
 紗英子の口調に何かただならぬものを感じ取ったのか、直輝は新聞を大雑把に畳み、脇へ寄せた。
 食後のコーヒーはリビングでと決まっている。イブのために焼いたブッシュ・ド・ノエルもクリスマスが終わる前にちゃんと今夜、食べたし、シャンパンも開けて、他のご馳走も何とか片付いた。
 今、直輝と紗英子は少し離れて同じソファに並んでいる。
「何だ、改まって。難しい話なら、また明日以降にしてくれないか。今日はまだクリスマスだろ。あまり込み入った話はしたくないな」
 昨夜、久しぶりに良いムードになりながらも、有喜菜のことで険悪になりかけた。漸く仲直りしたところにまた厄介な話を持ち出されたくないと思ったに違いない。
「さっきも言ったでしょ、大切な話なのよ」
 直輝がこれ見よがしに溜息をついた。
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