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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
「おい」
直輝が呼びかける。紗英子は一瞬ポカンと夫を見たが、それでも、喋るのを止めようとしなかった。
「だからね、わたしたちも―」
「おい! 俺の話も聞けよ」
直輝が声を荒げた。
「代理出産なんて口で簡単に言うが、それがどれほど大変なことか判ってるのか? 今、日本では代理母による出産は認められていないんだぞ? 下手をすれば、犯罪にもなりかねない違法行為だって自覚があるのか。大体、そんな状況で引き受けてくれる病院なんて、あるものか」
「大丈夫よ、ちゃんと国内で引き受けてくれるところを見つけたから」
紗英子があっさりと言うのに、直輝は眼を剥いた。
「お前、本気なのか? 何もそこまでする必要があるのか?」
「あるわ。私はどんなことがあっても、少しでも可能性がある限り、諦めない。私はもう子宮を失ってしまったけど、まだ卵巣は二つとも健康な状態で正常に機能している。でも、これから年齢が上がるにつれて、卵子の状態だって良くなっていくことはない。ならば、一日でも早く良い状態の卵子を取り出して、あなたの精子と受精させたい。その受精卵を代理母の子宮に戻して無事着床すれば、あなたと私の赤ちゃんが生まれるでしょう」
直輝が呼びかける。紗英子は一瞬ポカンと夫を見たが、それでも、喋るのを止めようとしなかった。
「だからね、わたしたちも―」
「おい! 俺の話も聞けよ」
直輝が声を荒げた。
「代理出産なんて口で簡単に言うが、それがどれほど大変なことか判ってるのか? 今、日本では代理母による出産は認められていないんだぞ? 下手をすれば、犯罪にもなりかねない違法行為だって自覚があるのか。大体、そんな状況で引き受けてくれる病院なんて、あるものか」
「大丈夫よ、ちゃんと国内で引き受けてくれるところを見つけたから」
紗英子があっさりと言うのに、直輝は眼を剥いた。
「お前、本気なのか? 何もそこまでする必要があるのか?」
「あるわ。私はどんなことがあっても、少しでも可能性がある限り、諦めない。私はもう子宮を失ってしまったけど、まだ卵巣は二つとも健康な状態で正常に機能している。でも、これから年齢が上がるにつれて、卵子の状態だって良くなっていくことはない。ならば、一日でも早く良い状態の卵子を取り出して、あなたの精子と受精させたい。その受精卵を代理母の子宮に戻して無事着床すれば、あなたと私の赤ちゃんが生まれるでしょう」