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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
「だから、そのこと自体が間違っていると言ってるんだ! 良いか、紗英子、自然の摂理に逆らうような行為は、神の意思に逆らうことになる。他人の腹に自分たちの卵を入れて育てさせて生ませるなんて、これはもう天への冒涜以外の何ものでもないよ」
 妊娠や出産は本来、神の領域なんだ。俺ら人間が勝手にコントロールしちゃいけないんだよ。
 直輝が囁くように言った。 
 紗英子は思わず笑い出した。
「何を寝ぼけたことを言ってるの? 直輝さんはいつからクリスチャンに改宗したの? それとも牧師にでもなったつもり? 本当にね、心から子宝を望む女には、天の意思も神の領域もそんなものは一切、関係ない。それは自分たちの受精卵じゃない―第三者の受精卵を使うっていうのなら、私だって初めからそんなことをしやしないわ。そんなことをするくらいなら、今、あなたが言ったように施設から身寄りのない子を引き取れば良いだけだもの。でも、私たちはまだ我が子を持てるチャンスがあるの。ならば、私はその一縷の可能性に賭けてみたい。あなたの血を引く子どもをこの手に抱いてみたいの。それが、そこまで責められるほどいけないことなのかしら」
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