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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第6章 【後編】 ♦RoundⅤ(覚醒)♦
 その話を紗英子は当の有喜菜と共に聞いた。隣に座る有喜菜の表情はどこまでも静謐そのもので、格別に安堵しているようにも歓んでいるようにも見えなかった、まるで感情というものを意識的に奥底に封印しているかのようにも見えた。
 かえって当事者ではない紗英子の方が涙ぐまんばかりに胸をなで下ろしていた。いや、この場合、やはり有喜菜に当事者という言葉はふさわしくないかもしれない。やはり、紗英子の方が当事者と呼ばれる立場にあるだろう。
 初回の診断では概ね、そのようなことが行われた。既に年の瀬に入り、病院そのものも年末年始の休みに入ることもあり、次回の受診は年明けに決まった。
 その年の正月は、紗英子にとって特別な想いで迎えるものとなった。泊まりがけでS市に赴くのだから、当然、夫の直輝にもクリニックに行くことは話している。しかし、当初から代理母出産に反対している夫は、紗英子の話にも気乗りしない様子で〝そうか〟と頷くだけであった。
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