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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第6章 【後編】 ♦RoundⅤ(覚醒)♦
新しい年はこの第一段階の治療から始まり、有喜菜は間を詰めて通院することになった。むろん、紗英子もそのときには必ず付き添い、必要な経費はすべて紗英子が負担した。
体外受精そのものの費用だけでも莫大なものになるはずで、正直、有喜菜の通院・治療費までを合わせると、その出費は侮れないものになった。むろん、紗英子の貯金だけではまかない切れず、紗英子は実家の両親に頭を下げて一部を出して貰った。
紗英子の話を聞いた両親は初め、絶句した。
紗英子自身、両親が結婚後、なかなか子宝に恵まれず十一年目にできた子どもである。両親もまた子どものできない辛さはよく理解はしてくれていた。しかし、そんな父親ですら、難しい表情で
―直輝君は一体、どう言っているんだ?
と開口いちばんに訊いてきた。ここで隠し事をしても始まらないので、紗英子は現状をありのままに話した。
と、父は腕組みをして首を振った。
―この話は諦めた方が良いんじゃないのか。確かに子どものいない人生は辛いものだが、しかし、それは夫婦仲が円満であってこそのものだろう。幾ら子どもができたって、直輝君とお前が仲違いするようなことにでもなれば、そこまでして子どもを作る意味がない。
体外受精そのものの費用だけでも莫大なものになるはずで、正直、有喜菜の通院・治療費までを合わせると、その出費は侮れないものになった。むろん、紗英子の貯金だけではまかない切れず、紗英子は実家の両親に頭を下げて一部を出して貰った。
紗英子の話を聞いた両親は初め、絶句した。
紗英子自身、両親が結婚後、なかなか子宝に恵まれず十一年目にできた子どもである。両親もまた子どものできない辛さはよく理解はしてくれていた。しかし、そんな父親ですら、難しい表情で
―直輝君は一体、どう言っているんだ?
と開口いちばんに訊いてきた。ここで隠し事をしても始まらないので、紗英子は現状をありのままに話した。
と、父は腕組みをして首を振った。
―この話は諦めた方が良いんじゃないのか。確かに子どものいない人生は辛いものだが、しかし、それは夫婦仲が円満であってこそのものだろう。幾ら子どもができたって、直輝君とお前が仲違いするようなことにでもなれば、そこまでして子どもを作る意味がない。