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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第6章 【後編】 ♦RoundⅤ(覚醒)♦
 正月明けには、二回目の受診があった。その日も紗英子は有給を取った有喜菜と共に電車を使って二時間かけてクリニックに行った。そこでは、これからの治療の具体的計画が担当医から懇切丁寧に説明された。
 まず、有喜菜の方が投薬や注射によって妊娠しやすい体内環境を整えなければならない。一方で、紗英子もまた排卵を促す処置を受け、卵子が十分に成熟した状態で採卵、つまり体外に取り出さなければならない。そこで初めて直輝の精子を採取し、二人の卵子と精子を顕微授精で受精させる。
 通常、精子に問題がなければ顕微授精は行わないとされているが、今回は紗英子自身の強い希望で、より受精率を高めるためにこの措置を取ることになった。
 受精卵となった状態で注意深く成長を見守り、代理母の子宮へ戻しても良いところまで成長を待ってから、いよいよ有喜菜の子宮に戻すのだ。言葉にしてしまえばそれだけではあるが、この過程が実はとても大変なのだった。
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