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第6章 【後編】 ♦ＲｏｕｎｄⅤ（覚醒）♦

　月日は流れ、紗英子と有喜菜は何度か共にＳ市のクリニックに通い、必要な処置を受けた。こういう治療は非常にデリケートなものなので、すべてが予定どおりにいくとは限らない。が、今回は順調に進み、紗英子の卵子も数個、良好な状態で取り出せた。
　卵子を採取するためには、全身麻酔をかけて、極細の針を直接、卵巣に突き刺す。苦しい検査や処置を受けるのは、実は有喜菜だけではなく、紗英子も同じであった。
　だが、もし自分の子宮で我が子を育てることができるのであれば紗英子はこれ以上のどんな辛い処置にも耐えただろう。しかし、今の自分には最早、胎内で子どもを育むことはできない。
　あくまでも、卵子を提供するところまでなのだ。ならば、今、自分にできることをやり遂げるしかない。
　紗英子は悲愴な覚悟で臨んだのだった。