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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第6章 【後編】 ♦RoundⅤ(覚醒)♦
 運命とは結局、そうなるべくしてなるものだというのが有喜菜の持論だ。確かに様々な選択肢があり、それを選びながら生きていくわけだが、とどのところは選び取ったのが最初から自分の人生であり運命であったとしか言いようがない。
 なので、もし、ああしていたらとか、あの時、こうしていたらと後から愚図愚図と考えるのはあまり好きではなかった。考えて変えられるものならば良いが、変えることなんてできはしないのだから、所詮時間の無駄ではないか。過去を振り返って後悔する暇があるほどなら、まだ決まってはいない未来について考えた方がよほど効率的というものだろう。
 しかし、後悔という言葉が嫌いな有喜菜も、あのときのことだけは今でも考えずにはいられない。
 そう、他ならぬ二ヶ月余り前のこと、紗英子から代理出産の依頼を受けたときの話である。
―私と直輝の子どもを生んでくれない?
 真摯な紗英子の瞳には、どこか憑かれたような光すらあって。
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