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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第6章 【後編】 ♦RoundⅤ(覚醒)♦
 実家は当てにはできない。有喜菜の父親が生きていた頃は、父親は羽振りの良い貿易商であったけれども、父が亡くなり弟が跡を継いだ今となっては、事業拡大が裏目に出て、最早、破算寸前だ。かえって頼りになるどころか、弟からは金の無心に来られる始末だった。
 弟の妻はまるで現実が認識できていない女である。かつての贅沢三昧が忘れられず、ブランド物を買いあさり、二人のできの悪い子どもたちをインターナショナルスクールだか何だか知らないが、私立の馬鹿高い学費の小学校に通わせている。
 自分の妻ひとりを御しきれない弟も男として情けない限りではある。有喜菜はできれば、あの弟一家とは関わり合いになりたくはない。が、そこは血を分けた弟だから、半泣きで
―姉ちゃん、少しで良いんだ。何とかしてくれよ。
 と泣きつかれると、無下に突っぱねることができないのも辛いところである。
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