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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第6章 【後編】 ♦RoundⅤ(覚醒)♦
悔しいけれど、紗英子が代理出産の報酬として出すという金は、今の有喜菜には必要なものだった。
あの日、有喜菜はマンションに帰り着いてから、冷蔵庫に買い置きしてあるチューハイとビールを浴びるように飲んだ。酔って理性を狂わせなければ、代理母なんて引き受けられなかったからだ。
依然として分別ある自分は
―そんなことは止めるんだ。
としきりに告げていた。
一方で、あの男の子どもを生みたいという想いと紗英子がちらつかせた金は抗いがたい魅力となり、有喜菜の心を絡め取る。
また、金と直輝の妻であるという立場をひけらかせて、自分を道具扱いする紗英子にも憤りと憎しみを憶えずにはいられなかった。
どうしてあの時、紗英子が代理母の話を持ち出したそのときに毅然として拒絶できなかったのか。そんな気弱な自分が酷い意気地なしにも思え、自己嫌悪に陥った。
有喜菜にしてみれば、酔っぱらって理性を麻痺させることで、何とかあの話に〝NO〟と言いそうになる自分を抑えようとしたのだ。だが、ついに自分を抑えきれず、携帯のナンバーを押したのが、一夜飲み明かした早朝だった。
あの日、有喜菜はマンションに帰り着いてから、冷蔵庫に買い置きしてあるチューハイとビールを浴びるように飲んだ。酔って理性を狂わせなければ、代理母なんて引き受けられなかったからだ。
依然として分別ある自分は
―そんなことは止めるんだ。
としきりに告げていた。
一方で、あの男の子どもを生みたいという想いと紗英子がちらつかせた金は抗いがたい魅力となり、有喜菜の心を絡め取る。
また、金と直輝の妻であるという立場をひけらかせて、自分を道具扱いする紗英子にも憤りと憎しみを憶えずにはいられなかった。
どうしてあの時、紗英子が代理母の話を持ち出したそのときに毅然として拒絶できなかったのか。そんな気弱な自分が酷い意気地なしにも思え、自己嫌悪に陥った。
有喜菜にしてみれば、酔っぱらって理性を麻痺させることで、何とかあの話に〝NO〟と言いそうになる自分を抑えようとしたのだ。だが、ついに自分を抑えきれず、携帯のナンバーを押したのが、一夜飲み明かした早朝だった。