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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第2章 RoundⅠ(喪失)♠
 けれど、焦ったからといって、そう簡単に生きる目標が見つかるというものでもないだろう。だとすれば、とりあえずは明日のことを考え、小さな目標を一つずつ見つけて乗り越え達成することしかない。その中、一年先のことも考える心のゆとりが自然と生まれてくるのではないかと考えている。
 今の小さな目標は、目前に迫ったクリスマス。そういえば、紗英子は自分から直輝にプレゼントなんかしたことがなかった。いつも直輝の方が記念日のお祝いだよと言って、気の利いたものを贈ってくれるだけだったのだ。
 この際、自分も直輝にプレゼントを贈るというのも良いかもしれない。でも、直輝が欲しいものって、何だろう。
 考えてみても、なかなか思い浮かばなかった。
 自宅に戻って三日が過ぎた。直輝は毎日、以前と同じように出社する。紗英子がもう家事くらいは大丈夫だと言うのに、彼はじっと寝ていろと言い張ってきかない。なので、晩の食事はすべて店屋物だ。ピザの宅配を取ることもあれば、直輝が会社帰りにコンビニ弁当を買って帰ることもある。
 朝はトーストとコーヒーとサラダだけなので、直輝が簡単に作った。むろん、洗い物も直輝が全部担当する。
 その日も直輝がすべてやってくれ、紗英子は何もすることはなく終わった。別に、それほどの重病人というわけでもないのにと夫の壊れ物を扱うような仕草に笑ってしまうけれど、大切にして貰っていると思えば、嬉しくないはずがない。
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