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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第6章 【後編】 ♦RoundⅤ(覚醒)♦
 だが、有喜菜はそうしなかった。ただ感情の高ぶりを無理に封じ込んで言った。
―少しね。
―少しどころじゃなさそうよ。そんなに飲んだら、身体を壊すでしょう。気をつけてね。
―へえ、私の身体を紗英が心配してくれるんだ?
 今度は長い沈黙があり、やや落ち着きのない声が聞こえてきた。
―当たり前よ、子どものときからの友達じゃない?
 嘘だと思った。親友であれば、代理母になれなんて頼めるはずがない。紗英子が有喜菜の身を案じているのは、あくまでも自分の子どもを宿すことになる〝器〟としての私を心配しているだけ。
 そんなことは聞かなくても判った。
―判った、せいぜい、これからは気をつけるとするわ。
 それ以上話すのも馬鹿らしくて、有喜菜は携帯の電源を切った。ツーツーという発信音を空しく響かせる携帯を放り出し、有喜菜は声を上げて泣いた。
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