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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第7章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦

 その日がついにやってきた。当日の朝、紗英子は有喜菜と共にS市のエンジェル・クリニックを訪れた。この病院には産科・婦人科・小児科・不妊治療特別外来が設けられているが、不妊治療外来は基本的に完全予約制になっている。
 既に予約を取ってあったものの、待つこと一時間。その時間が紗英子には永遠にも続くように思われた。
「矢代紗英子さん」
 やっと名前を呼ばれ、有喜菜と二人で待合から診察室へと移動する。予約制ということもあってか、待合室には有喜菜と紗英子の他には誰の姿もなかった。こういうところも、このクリニックの良いところだと思う。
 一般の産婦人科では、どうしてもお腹の大きな妊婦と不妊治療に来た患者が同席することになってしまう。それはやむを得ないことではあるけれど、やはり、いかにしても子どもに恵まれない女性にとって、幸福そのものの妊婦を見るのは辛い面がある。
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