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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第7章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
 しかし、このクリニックでは、そういう精神面も配慮されていて、不妊治療外来と産科婦人科の病棟は別棟で、入り口も独立しているため、よほどのことがなければ妊婦に出くわすことはなかった。
 名前を呼ばれた紗英子が診察室のドアを開けると、担当医が待ち受けていた。
 まだ三十前後の若い医師ではあるが、院長の直弟子ということもあり、腕の方は確かだと定評がある。また患者の立場に寄り添った医療を目指すこのクリニックの医師らしく、穏やかで、間違っても以前通っていた総合病院の医師のように患者を傷つけるような発言はしない。
 紗英子も心からの信頼を寄せて治療を任せることができた。
 医師はまず有喜菜から最近の体調の変化などを訊ね、その後、有喜菜は別室で尿検査を受けることなった。
 受精卵を有喜菜の子宮に戻してから、丁度二週間が経過している。ここでひとまず、尿検査をして妊娠反応の有無を確認するのだ。最近の妊娠検査薬は精度が高いため、ほぼ百パーセントに近い確率で、妊娠していれば反応が出るという。
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