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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第7章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
それが、今はどうだろう! 寒桜は濃紺のピンクに染まり、湖は早春を感じさせる穏やかな陽光に煌めいている。蒼穹を舞う白い鳥たちは祝福の歌を奏でるかのように優雅に翼をひろげていた。
昨日まで、いや、つい今し方まで灰色に染まっていたはずの周囲が一瞬にして薔薇色に変化したような感覚である。世界中が自分のために祝福してくれているようでもある。自分はこんなにも子どもを渇望していたのかと今更ながらに思い知らされた。
「ありがとう、有喜菜」
ダイヤモンドのように輝く湖面を見ている中に、紗英子はまたしても涙が込み上げてきた。何と言っても、いちばんの功労者は有喜菜なのだ。まずはお礼を言わなくてはと思い、口にした。
「あなたのお陰よ。これで私と直輝さんも漸く自分の子どもが持てるわ」
紗英子は傍らにひっそりと立つ有喜菜を見た。相変わらずのスレンダーで、当然ながら、まだお腹は少しも膨らんではいない。だが、彼女の胎内には既にひそやかに新しい生命が芽生え、育ちつつあるのだ。そして、それは有喜菜の子どもではなく、他ならぬ紗英子の、紗英子が心から愛する男、直輝の子であった。
昨日まで、いや、つい今し方まで灰色に染まっていたはずの周囲が一瞬にして薔薇色に変化したような感覚である。世界中が自分のために祝福してくれているようでもある。自分はこんなにも子どもを渇望していたのかと今更ながらに思い知らされた。
「ありがとう、有喜菜」
ダイヤモンドのように輝く湖面を見ている中に、紗英子はまたしても涙が込み上げてきた。何と言っても、いちばんの功労者は有喜菜なのだ。まずはお礼を言わなくてはと思い、口にした。
「あなたのお陰よ。これで私と直輝さんも漸く自分の子どもが持てるわ」
紗英子は傍らにひっそりと立つ有喜菜を見た。相変わらずのスレンダーで、当然ながら、まだお腹は少しも膨らんではいない。だが、彼女の胎内には既にひそやかに新しい生命が芽生え、育ちつつあるのだ。そして、それは有喜菜の子どもではなく、他ならぬ紗英子の、紗英子が心から愛する男、直輝の子であった。