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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第7章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
だとすれば、直輝の場合は、妻たる紗英子の腹が膨らんでいくわけでもないのだし、我が子の存在を意識させるものが何もなく、ただ〝子どもができた〟とだけ告げられても、自分が父親だという自覚を持つのは難しいだろう。
が、その中に有喜菜のお腹も大きくなり、超音波写真に赤ちゃんの姿が映るようにでもなれば、直輝の心情も自ずと違ってくるのではないか。更に十月十日過ぎて、赤ん坊が生まれ、本物の赤ちゃんを家に連れて帰れば、歓びが現実となり、ひしひしと迫ってくるに違いない。
M駅で降りた紗英子は、苛々と腕時計を覗き込んだ。今日は有喜菜と二人で待ち合わせて外食を共にする予定だった。幸いにも、直輝は得意先の接待とかで、今夜は遅くなるらしい。
既に腕時計は午後七時を回っていた。約束の時間は六時半。有喜菜の勤務する会社は午後五時で、大抵は定時退社だと言っていた。たまに残業がないわけではないが、妊娠が判ったので、上司に報告して今後はできるだけ負担を軽減して貰うと話していた。
彼女が妊娠について会社にどのような報告をするのか判らないが、間違っても紗英子や直輝夫婦の名を持ち出すことはあるまい。どんな説明をされようが、紗英子には拘わりのないことと割り切っている。
が、その中に有喜菜のお腹も大きくなり、超音波写真に赤ちゃんの姿が映るようにでもなれば、直輝の心情も自ずと違ってくるのではないか。更に十月十日過ぎて、赤ん坊が生まれ、本物の赤ちゃんを家に連れて帰れば、歓びが現実となり、ひしひしと迫ってくるに違いない。
M駅で降りた紗英子は、苛々と腕時計を覗き込んだ。今日は有喜菜と二人で待ち合わせて外食を共にする予定だった。幸いにも、直輝は得意先の接待とかで、今夜は遅くなるらしい。
既に腕時計は午後七時を回っていた。約束の時間は六時半。有喜菜の勤務する会社は午後五時で、大抵は定時退社だと言っていた。たまに残業がないわけではないが、妊娠が判ったので、上司に報告して今後はできるだけ負担を軽減して貰うと話していた。
彼女が妊娠について会社にどのような報告をするのか判らないが、間違っても紗英子や直輝夫婦の名を持ち出すことはあるまい。どんな説明をされようが、紗英子には拘わりのないことと割り切っている。