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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第7章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
 たとえ誰の子宮で育とうと、別の女が生もうと、子どもの体内を流れる血は直輝のものであり、紗英子のものなのだ。結婚して十三年めにやっと恵まれた我が子だというのに、夫はその誕生が嬉しくはないのだろうか。それとも、最初から彼が烈しく反対しているように、神の倫理とやらを越えた医療技術の果てに得た子どもは、ただそれだけで愛情が持てないとでも?
 だが、と、紗英子は思い直す。直輝にしてみれば、代理母の妊娠を告げられたところで、何の感慨も湧かないのも無理はないかもしれない。何しろ、元来、男性は妊娠・出産を経験する生きものではない。普通に生まれてくる赤ん坊でも、父親の方は母親と異なり、〝親〟となる自覚はゆっくりと芽生えてくるものだという。
 女は身籠もった瞬間から、早々と親になるけれど、男は自分の妻のお腹が徐々に膨らんでくるのを見、時々は妻のお腹を元気に蹴ってくる赤ん坊の存在によって、やっと自分が父親になるのだと認識する。その点が母親と父親の大きな違いなのだと、以前、育児書か何かで読んだことがあった。
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